● 決算書を入手する!
株式会社は、決算書のうち、貸借対照表と、損益計算書の要旨をまとめて、新聞に載せています。会社は公器という考えから、決算の結果を広く株主などに知らせる役割を持ちます。また、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書は、株式上場企業や店頭公開企業のほとんどが、自社のホームページで公表(決算公告)しています。
● 決算書から1人あたりの能力を読む!
1人あたりの数字を見ることで、社員の平均能力が判ります。
1人あたり売上高 =売上高÷従業員数
売上高を従業員の数で割った額を言います。会社の健全性が判ります。売上高が伸びなくても、1人あたりの売上高が伸びていれば、健全性が増したと言えます。
1人あたり当期利益 =当期利益÷従業員数
当期利益を従業員の数で割った額を言います。同じく健全性が判ります。全体の当期利益が伸びなくても、1人あたりの当期利益が伸びていれば、健全性が増したと言えます。
● 決算書から生産性を読む!
労働生産性 =売上総利益(粗利益)÷従業員数
従業員1人が、どれだけの総利益(粗利益、付加価値)を生み出したかを表す数字です。「社員1人あたりが、会社の売上総利益(粗利益)に対していくら貢献したか」が判る数字です。労働生産性の10%前後が1人あたりの年収の適正値と言われています。
労働分配率 =人件費÷売上総利益
粗利益に対し、人件費がどれだけかかったかを表します。大きければ大きいほど生産性が高く、日本の場合、製造業で60%前後、全企業平均では50%前後と言われています。
売上高総利益率 =売上総利益÷売上高
売上総利益(粗利益)を売上高で割ったもの。粗利益率、縮めて「粗利」といえばこの数字のことで、中には「荒利」と呼ぶ会社もあります。商品の仕入原価、加工外注費、製造原価を下げると利益率が上がります。製造業平均で20%前後、小売業は仕入形態により、かなりバラツキがあります。
(売上高)営業利益率 =営業利益÷売上高
営業利益を売上高で割ったもので単に営業利益率と言えばこの数字を意味します。営業活動を通じて得た利益から、必要な販管費および一般管理費、つまり経費を引いた残りの利益を稼ぐのに、どれだけ売上高が必要だったかという指標です。利益率が大きければ大きいほど、効率よく儲けたということですが、言い換えれば、どれだけコストを削減したかという指標でもあります。日本の場合、平均3%前後と言われています。
固定資産回転率 売上高÷固定資産
設備投資の適正度を見ます。設備が売上にどれくらい貢献しているのか、あるいは貢献していないかが判りますが、業態によって大きく数字が異なります。生産設備が伴う製造業は平均2(200%)前後、電力会社や固定資産そのものを販売する不動産では0.5(50%)前後、商業平均は10(1000%)を越えています。
固定資産器具、設備、土地建物、特許権、子会社株式など
● 決算書から副業による利益を読む!
本業が不調でも「副業」が好調ということもあります。本業だけで儲けを出すのは危険な時代になりました。会社には副業としての収益、つまり経常利益や特別利益があり、いわゆる財テクなどの収益がこれにあたります。税金を払った後の利益(税引後当期利益)が本当の利益という観点から問題はありませんが、副業が本業を上回る伸び率を示す企業は注意が必要です。
注: 本業とは?本業とは定款上、会社の設立目的となる業務です。ここで稼いだ利益が営業利益と言います。受取利息などの利益や、支払利息などの財務上の損失など、営業外収支を計上したものが経常利益です。
販売管理費(販管費)=人件費+営業費+販売費+施設費
営業利益=売上総利益−販売管理費
経常利益=営業利益−営業外損失+営業外利益
売上高経常収益率 =経常利益÷売上高
経常利益を売上高で割ったもので、経常利益率とも言います。財テク上手な会社は、営業利益率より高いこともあります。会社は、社員の退職金準備などを財テクで積み立てています。財務による収入や損失を「営業外損益」と呼び、本業の利益に営業外損益をプラスマイナスしたものが企業のトータルな実力です。
売上高当期利益率 =当期利益÷売上高
当期利益を売上高で割ったもので、当期利益率とも言います。税金を納めた後に残った最終的な利益が、売上高に対してどれくらいあるかを示すものです。
特別損益
特別利益と特別損失の総称で、現場では「特損」「特失」などと縮めて呼んだりします。不動産や株の売買による利益および損失、譲与された固定資産などの評価益、天災による被害などによる評価損を指し、経常利益から差し引くと税引前当期利益、そこから税全額を引くと当期利益(純利益)になります。
※経常利益−特別損益=税引前当期利益
● 決算書からコスト削減の意欲と結果を読む!
儲けを出すには、売上を伸ばすだけでなく、原価、経費を抑えることも必要です。この積み重ねが大きな違いを生みます。
売上高原価率 =売上原価÷売上高
売上に対して原価がどれくらい占めているかを表します。粗利益の割合を示す売上高総利益率とは表裏一体です。
売上高販管費率 =販管費÷売上高
売上高を確保するために必要な経費の割合です。この値が小さいほど、低コストな営業活動を行っていると言えます。
総資本回転率 =売上高÷総資本
投下した資本に対する売上高をさします。この数字が大きいほど「元手のかからない商売」をしていると言えます。
● 決算書から資本と負債を読む!
以前は、資本が高ければ高いほど安全と言われていました。しかし現在は、資本の中身が問われています。自己資本(自分で用意した資本と剰余利益)に対し、他人資本(=借金)が何倍もあっては健全な経営とは言えなくなってきました。余談ですが、知人の会社が倒産した時、割とあっけらかんとしていたのは、ひとえに「自己資本率」が高かったからです。もちろん大損したことには変わりはありませんが・・
自己資本比率 自己資本÷総資本(=負債の部合計)
会社が持つ全ての資本に占める自己資本の割合、つまり返済義務がない自己資本=資本の部=(株主資本と蓄積された利益)の合計額を総資本=負債の部合計で割った数字です。優良企業は50%前後、40%が目標ライン、赤字企業の平均はゼロ以下、つまり自己資本マイナスという状況です。自己資本比率が小さい会社は、資金の調達を借入金でまかない、かつ万が一の際は返済できないという、非常に危うい状況といえます。
負債比率 負債合計÷自己資本
会社がどれくらい借金を背負っているかを見ます。レバレッジ比率、ギアリング比率とも言います。示すところは自己資本比率と同様ですが、この数字が低いほど優秀です。ちなみに日本の企業平均が400%であるのに対し、アメリカは100%以下です。
流動比率 流動資産÷流動負債
会社の支払能力を見ます。1年以内に現金化可能な資産(流動資産)が、1年以内に支払われなければならない負債(流動負債)に対してどれだけあるかを示します。流動比率が1(100%)を切っていると言うことは、短期的な支払いが収入を上回っているという状態で、常に資金繰りが苦しいことを意味します。日本の場合、全企業平均で120%、理想は200%以上です。
当座比率 当座資産÷流動負債
流動資産の中には、すぐに現金化できない資産(棚卸資産など)も含まれているため、短期的な支払い能力を測る物差しとしては、当座比率の方が厳格です。短期的な支払能力を把握する際にはとても重要な数値で、別名リトマス紙比率とも言います。 100%以上あれば優秀、日本の企業平均は80%ほどです。もっとも、有価証券の中身(不良債権)も重要ですが・・・
※当座資産=現金、預金+受取手形+売掛金+有価証券
● 決算書から会社の収益性を読む!
以前は、大きな会社=優良企業というイメージがありました。しかし、現在は大きい会社ほど、小回りが利かずうまく回転できていません。過剰在庫が商品回転率を下げ、買掛金を増加させ、売上高も大きい代わりに、未収入金、売掛金も大きく、代金を回収しきれず黒字破産ということもあります。
棚卸資産回転率 =売上高÷棚卸資産
商品回転率とも呼ばれ、商品や在庫が適正な額かどうかの目安になります。この数字は、営業活動を通じてどう変化しているかを読み解くのがポイントです。売上高が増えても、棚卸資産が増えていれば、過剰在庫となり資金繰りを圧迫、借入金増大を招きますし、過剰在庫が増えれば、商品ロスや維持管理に要する人件費、施設費、営業費の増大も招きます。
棚卸資産回転期間 =棚卸資産÷(売上高÷12ヶ月)
在庫、あるいは商品回転期間とも呼ばれ、商品が在庫から何ヵ月後に販売されるかを示します。短ければ短いほど良いのですが、この数字も、どう変化しているかを読み解くのが重要です。
売上債権回転率 =売上高÷(受取手形+売掛金)
代金回収効率を読みます。まだ支払ってもらっていない売上代金を現金化しなければキャッシュフローが滞り、経営を圧迫することになります。この数字も、変化をキャッチして手を打つことに意味があります。
売上債権回転期間
=(受取手形+売掛金)÷(売上高÷12ヶ月)
資金繰りの余裕度を読みます。売り上げた分の代金回収がどれくらいの期間で達成できるかを示します。速い回転で、短い期間でキャッシュフロー経営ができているかを表します。売上債権回転率とあわせて読みます。
買掛債務回転期間 (支払手形)÷(売上高÷12ヶ月)
借金を返す体力を見ます。これも短ければ短いほど優秀です。
買掛債務回転率 売上高÷(支払手形+買掛金)
買掛債務回転率が良く、買掛債務期間が短い方が良いです。
総資本経常利益率 経常利益÷総資本
会社の総合的な収益力を見ます。経常利益が総資本に対してどれくらいの比率かを表します。経常利益が、会社のトータルな実力とすると、この数値は、「どれだけつぎ込んで、どれだけ稼いだか」のトータルな指標といえます。優良企業は10%を越えていますが、平均は数%といったところです。
総資本当期利益率 当期利益÷総資本
ROA(Return On Assets)とも呼ばれています。総資本をどれだけ有効に活用して当期の利益を上げたかを読みます。総資本は貸借対照表の資産の部合計とイコールですからリターン・オン・アセット、つまりどれだけの資産を活用してどれだけもうけたかの指標というわけです。分子が経常利益ではなく当期利益である理由は、当期利益が株主配当に直結しているからです。
自己資本当期利益率 当期利益÷自己資本
ROE(Return On Equity)とも呼ばれています。リターン・オン・イクィティ、つまり株主がどれだけ投資して、いくら儲けているのかという指標ですアメリカの平均が20%弱であるのに対し、日本はわずか平均2%、優良企業でさえ3%というのですから・・・。
● 決算書から安全性を読む!
現在は、パソコンやコピー機などはリースで済ませる時代になりました。一概には言えませんが、借金をして設備投資(固定資産購入)をするより、その時その時にベストなものを選ぶほうが安全な場合が多々あります。設備投資を資産購入ではなく、リース化することで、損益分岐点上赤字でもキャッシュフロー分岐点では黒字となることもあります。
固定比率 固定資産÷自己資本
設備投資が自己資本の範囲内か、逆を言えば、借入金でまかなっていないかどうかの物差しです。100%以下が望ましいのですが、日本の場合、平均で160%と言ったところです。
固定長期適合率 固定資産÷(固定負債+自己資本)
固定資産に対する投資の安全性を見ます。この場合、固定負債とは長期借入金のことを指します。この数字が1(100%)を越えている場合は、短期借入金(1年未満で返済する借金)で設備投資を行っているということを意味します。これが何を意味するか、一年以内に訪れる借金返済日を待つまでもなく明らかです。ちなみに、日本の全企業平均は約80%となっています。
損益分岐点 固定費÷(1−(変動費÷売上高)
これ以上売らないと儲けが出ないという目安です。当然低い方が安全です。固定費を下げたり、変動費を下げたり、商品の単価を上げることで、損益分岐点が下がります。
固定費販管費のうち、人件費、営業費(水光熱費、リース料など)、施設費(地代家賃、貸借料)などを言います。
変動費仕入原価(原材料費)、販売費(包装資材、運送配達費など)を言います。売上高に連動する費用のことです。
損益分岐点安全率 売上高÷損益分岐点売上高
あとどれだけ売上が落ちても赤字にならないか、値下げをする際の指標になります。1.2(120%)を越えていれば安全です。
減価償却
利用の仕方や時間の価値によって固定資産は価値が減少します。この価値の減少を金額で示したものです。当然の事ながら、リース物件は減価償却の必要がありません。
定額法減価償却費を、毎年一定の額で減額していく方法です。経営計画を立てやすいという特徴があります。平成10年から、新築あるいは増築の建物は定額法のみとなりました。
定率法減価償却費を、毎年一定の率で減額していく方法です。最初のうちは大きな減額になり、段々と少額の減額になるのが特徴です。
売上高減価償却前営業利益率
(営業利益+減価償却費)÷売上高
営業利益に現金の支出を伴わない減価償却費を足して、売上高の割合を出します。
付加価値生産性
付加価値とは、会社が新たに生み出した価値のことを言います。付加価値生産性は、従業員1人あたりが生み出す付加価値(粗利益)のことで、労働生産性とも言います。
売上高と利益の伸び
売上高と粗利益の伸びを同時に見ると、会社の成長性が判ります。売上高、粗利益ともに伸びると増収増益、売上高が伸び、粗利益が減ると増収減益、売上高が減り粗利益が伸びると減収増益、売上高も粗利益も減ると減収減益となります。このことから、価格競争や商品単価など原因を探ることができます。
● 決算書から会社の勢いを読む!
前期、さらに遡ってと比較することで会社のトレンドが判ります。決算書には前期比較が掲載されていますが、実際には数期にわたって比較することが望ましいです。
増収率 =(当期売上高−前期売上高)÷前期売上高
当期売上高から前期売上高を差し引いたものを、前期の売上高で割って算出した数字を言います。前期の売上高から、当期がどれくらい伸びているか(落ちているか)を示します。注意すべきは、前期、前々期、できれば5年ほど遡って比較しないと、本当の姿が見えてこないということです。また、業種、競合他社との比較も重要です。現在、日本の企業の増収率は1%以下が普通ですが、大企業であればあるほど伸びが期待できません。
増益率 =(当期利益−前期利益)÷前期利益
当期利益から前期利益を差し引いた物を、前期利益で割って算出した数字を言います。前期利益よりも、当期がどれくらい伸びているかを示します。経常利益の増加率ではなく、あえて当期利益としたのは、今後さらに重要視されるであろう株主配当を意識してのことです。増収率同様数年のスパンで、業種平均、競合他社とも比較をする必要があります。また、売上高、経費の推移と比較することも重要です。
● 最後に 新会社法について
2006年春から、有限会社がなくなり、株式会社に統一されます。「利益処分案」がなくなり、「株主持分変動計算書」ができます。利益を資金に組み込んだり、資本の部の中で振り替えを行う処理が、期間中のどの段階でも行うことができるようになります。